平成19年度中国語学科主催講演会報告
平成19年度中国語学科主催講演会報告
さる12月3日、みたもとこ先生を講師にお迎えし、中国語学科主催の講演会が開催されました。当日は、学外から約20名、他学科からも12名(うち英米語学科9名、国際ビジネス学科3名)の学生が来聴し、中国語学科1・3・4年次の学生および中国語学科教員を合わせて、約170名が聴講しました。 「中国ビジネス失敗の法則」という講演タイトルは、ひと昔前ならば、中国と日本の文化・社会通念の違いに由来する商習慣の違いや、異なる政治体制に絡んだ不確定要素といった、中国でビジネスをする場合に生じるリスクを連想させたものでしたが、いまや世界各地から一流の人材がこぞって集まる上海のビジネス界において、新規事業を立ち上げるという難しい挑戦をされた先生は、その失敗の経験から、国境を超えた人間のネットワーク(中国の現場の状況を把握している経営者の必要性、中国市場のエキスパートの獲得、中国人の人材育成)の構築の重要性を強調しておられました。ビジネスの世界では国境や文化の違い云々はすでに野暮ったい話となるほど、グローバル化が進んでいることを感じさせられました。このようなグローバル・コミュニティとなったビジネスの現場では、外国語は単なる道具にすぎず、日本語の堪能な外国人が無数にいる中で自分自身の価値を作り出すためには、日本人というアイデンティティ(日本についてよく知っていること)と専門性(言葉以外に、もう一つ他人よりよく知っている分野を持っていること)を生かすことが大切だということ――将来ビジネスや通訳・翻訳・マスコミ・広告・PRといった「コミュニケーション」を仕事とする分野で活躍する可能性のある、外国語大学に学ぶ学生達にとって、極めて大切な助言をいただきました。 みた先生は、東京から本学に到着されるなり1時間半にわたる講演をされ、ご講演の後も次々とやってくる学生達の個別的な質問に丁寧にお答えくださいました。それでいて少しも疲れをお見せにならない所に先生の若さを感じました。また、ご講演中は、パワーポイントを巧みに駆使しながら、様々な話題を非常に分かりやすく順序立てて話していただき、しかも一言も言いそこないがないという、100%の正確さは、さすがはアナウンサーの仕事を経験された、言葉の専門家だと感心させられました。みた先生はご講演の中で失敗の経験を中心に話をされ、その後の成功した例については、ほんの少ししか触れられていませんでしたが、失敗を恐れず未知の世界に果敢に飛び込んでいく、勇気と自信に満ちた素敵な女性のイメージが、みた先生のアドバイスと共にしっかりと本学の学生の心に刻まれたことと思います。 なお、講演会の後、熱心にみた先生からさらにアドバイスをいただいていた中国語学科の学生に感想文を書いてもらいましたので、あわせてお読みください。 (黄愛玲)
みたもとこ先生のご講演を聞いて
中国語学科3年次 藤田真梨子
私事で恐縮ですが、私は名古屋外国語大学主催の「第3回日本語表現大会」でスピーチ母語部門・朗読部門の両方において優勝をいただきました。私は日本語を正しく話すこと、自分の思いを明確に、そして誤解のないように人に伝えることをいつも考えています。そのような思いが今回の受賞という形となって認めていただけたものと信じています。 バイリンガル・アナウンサーとしても活躍されたみた先生のご講演の中で、私が一番印象に残ったのは、「外国語能力の向上以前に、日本語表現能力が大切であり、外国人と関わるときには、自分が日本人である以上、まず日本の文化・歴史・社会などを知っているべきだ」というお言葉です。私は現在、アナウンサーを目指しています。海外へも取材に行き、現地の生の様子を伝えることを目標としています。私が不安に思っているのは、外国語である中国語や英語をネイティブスピーカーのように使うことができないことですが、しかし、みた先生に伺ったところ、「テレビ番組などの取材の場合、語学力自体への心配は要らない。むしろ、自分の聞きたいことを明確に持ち、現地の方に質問を投げかけることで、アナウンサーとしての役目を果たすことができる」という答えをいただきました。 海外で仕事する上でも重要になってくるのは、日本についての知識、日本語表現能力だということを、みた先生は教えてくださいました。私は自分が大切にしてきた日本語能力を基に、日本についての知識を深め、その上に、外国語大学の学生として、国際感覚と中国語・英語の能力を磨き、通訳を通さずに自ら直接外国人と話すことができるようになりたいと思います。