平成20年度中国語学科卒業論文概要
湖南省における現代の毛沢東
飯沼慶美
本稿において第一章では、毛沢東が中国において持つ意味の推移について述べる。まず、彼の生存中、それらの意味は中国共産党によって作られたと考え、当時の切手を用いて説明する。中国共産党政権の下、毛沢東は政治家や軍事家としてのイメージが確立され、また、思想家や芸術家としての顔も作られた。さらには、文化大革命の中で、その存在を神にまで高めている。しかし、毛沢東の死後、彼の意味は必要性や中身を失った。そして現代では、時代の流れを受けて毛沢東ブームが再来し、毛沢東は日本で言えば菅原道真のような過去の偉人として新たにお守りという意味を持つこととなった。今の中国において毛沢東は、建国の父であり、歴史上の偉大な政治家、軍事家、思想家、芸術家として存在している。第二章では毛沢東の故郷である湖南省にスポットを当てて、湖南省と毛沢東の関わりを述べていく。現代中国全土で紅色旅遊が盛り上がりを見せる中で、全国の革命地に訪れる人が多くなった。それを受けて、湖南省の毛沢東関連地である韶山と長沙の状況について説明する。まず韶山は毛沢東が生存時革命の聖地としての役割を持っていた。しかし、歴史的に毛沢東のもつ意味合いが変化を見せることで、韶山も聖地から偉人の革命地へと姿を変え、かつて2箇所しかなかった観光施設も近年では数多く建設された。また同様に長沙の観光も変化をみせ、観光施設だけでなく、新たなビジネスも存在している。このように、今の湖南省において毛沢東の存在は、湖南省のブランドネームと変わっているのである。(指導担当 西川真子)
日中類別詞の比較
渡辺雅之
本卒業論文では、日中両言語の類別詞をとりあげ、その中で「数量類別詞」について両言語間の差違を考察した。「数量類別詞」とは、例えば、日本語でいう「三匹の犬」の「匹」にあたり、中国語では‘三只狗’の‘只’にあたる、数詞と名詞の間に付加されるものである。「助数詞」「量詞」とも呼ばれ、その数は膨大であり時代や社会の変化によってまとまったり独立をしたりしてきたため分類も複雑である。 日本語と中国語の類別詞には多くの共通点が見られるが、中国語の方は範疇がとても細かく、量詞にあてられる漢字一字一字の元の意義を忠実に守っている。日本語の範疇も細かいといえるが、時代の流れの中で共通部分を持っているものと固まり、まとまっていった。元の意味から大きく意味の変わってしまったものもある。本卒業論文では、どうしてそのような理由になったかまでは結論が出せず、今後の課題となった。(指導担当 劉綺紋)